事実婚の取り扱い

婚姻は届出ることによってその効力を生じます。
婚姻届を提出すれば、法的にも結婚したとして認められ、配偶者として相続人となり、税制上の優遇、社会保障上の権利等を得ることになります。
婚姻届を提出していないが、婚姻意思があり、同居生活をし、実態として夫婦関係にあるカップルがいわゆる「事実婚」≒内縁です。
内閣府男女共同参画局のコラムでは2.3%~2.9%が事実婚であるとの調査結果が公表されています。婚姻の届出をするか、しないかで制度上の取り扱いが大きく異なるのも事実です。そして、法律婚では認められる権利も、当然には認められないのです。
この場合において、法律婚との制度の取り扱いの違いを解説したいと思います。
法律婚と事実婚の制度比較

| 法律婚 | 事実婚 (男女) | 事実婚 (同性) | |
|---|---|---|---|
| 配偶者の相続権 | ◯ | ✖ | ✖ |
| 相続税の配偶者の税額軽減 | ◯ | ✖ | ✖ |
| 所得税の配偶者控除 | ◯ | ✖ | ✖ |
| 親権 | 共同 | 単独 | 単独 |
| 健康保険の扶養家族 | ◯ | ◯ | ✖ |
| 国民年金の3号被保険者 | ◯ | ◯ | ✖ |
| 公的年金制度の給付(遺族年金 死亡一時金等) | ◯ | ◯ | ✖ |
| 労災遺族補償年金 | ◯ | ◯ | ✖ |
| 慰謝料請求 | ◯ | ◯ | △ |
| 財産分与請求 | ◯ | ◯ | △ |
※婚姻関係に準じていることが要件(同一の生計や同居等)
事実婚を選択する理由には、夫婦別姓を希望する、法律婚をするメリットが無い、離婚や死別後に新しいパートナーとお付き合いしているが子供や親族から結婚を反対されている、そして同性カップルの様に結婚したくてもできないケース等様々です。
事実婚(男女カップルの場合)は「法律に準じた関係」にあり、法律婚に比べ限定的ではありますが法的な保護が与えられています。例えば、上記表にある健康保険や年金、労災等の社会保障制度に関しては法律婚と同様の権利が付与されます。また、「同居協力扶養義務」「貞操義務」「日常債務の連帯責任」等の義務も負うものとされ、慰謝料や財産分与の請求も可能となります。
事実婚(同性カップルの場合)は上記表からわかるように、婚姻届を提出していないという事実は同じなのに、事実婚(男女)と比べ不利益の差が生じています。税制上の優遇は勿論のこと、事実婚(男女)では認められていた社会保障制度上の受給権も認められていません。
これまでは、同性カップルが「法律に準じた関係」、つまり事実婚であるかは不明でした。しかし令和元年「少なくとも民法上の不法行為に関しては、婚姻に準ずる関係から生じる法律上保護される利益を有する」との判断があり、これにより「慰謝料請求」は認められることになりまた。令和6年には「犯罪被害者給付金の受給」が認められる判決がでています。今後は「借地借家法」や「DV防止法」「入管法」等、24の法令で事実上婚姻関係と同様関係にあった者に「同性パートナー」が含まれる扱いになるようです(内閣官房副長官補室 令和7年1月27日)。少しづつではありますが、同性カップルの制度上の権利も広がりをみせています。
住民票の記載
事実婚(男女)であることの証明は住民票の続柄でできます。婚姻意思があり、戸籍などで重婚していないことを証明し、一方を「世帯主」、もう一方を「夫(未届)または妻(未届)」と記載します。遺族年金等の公的年金給付の際に事実婚を証明する資料として添付することができます。
事実婚(同性)の場合、住民票記載に関しては、一方の続柄を「同居人」や「縁故者」、または双方を世帯主(別世帯)として登録することになります。事実婚(男女)のように一方を「夫(未届)/妻(未届)」とした「夫婦」としての登録ができないのが現状です。しかし、令和6年5月に長崎県大村市で「夫(未届)/妻(未届)」の住民票を交付したのを皮切りに、栃木県では同年7月に鹿沼市、8月に栃木市がパートナーシップ契約宣誓を条件に「夫(未届)/妻(未届)」の記載に変更できるようになりました。
法律婚に近い関係にするために
これまで、法律婚と事実婚の制度上の比較をしてきました。大なり小なり法律婚との違いはありますが、この差を可能な限り法律婚に近づけられる方法が遺言と契約です。特にパートナーへの相続権を補うために、遺言書の作成は必要です。また場合によっては、将来的に判断能力が低下したときに備え、あらかじめパートナーを任意後見人に指定したり、死後事務を委任する契約をしておくことも有効です。そしてこれらを書面化し、更に確実なものとするために公正証書での作成をすべきと考えます。

事実婚(男女)
・公正証書遺言
・任意後見契約書
・死後事務委任契約書
・事実婚に関する契約公正証書
同居・協力・扶助義務、財産の帰属、療養看護・医療同意、子の認知、親権及び氏、契約解除、財産分与、損害賠償等をあらかじめ契約書で定めておきます。個別具体的に財産関係や一方的な契約解除事項を決めておくことで、本人同士や親族間のトラブル防止に有効と考えられます。

事実婚(同性)
・公正証書遺言
・任意後見契約書
・死後事務委任契約書
・同性婚契約(同性パートナーシップ)公正証書
同居・協力・扶助義務、日常家事債務、療養看護・医療同意、財産関係、契約解除、財産の清算、慰謝料、協議条項等をあらかじめ契約書に定めておきます。「事実婚に関する契約公正証書」同様に、トラブルの抑止・防止を期待できます。
・各自治体の同性パートナーシップ宣誓制度
同性パートナーシップ宣誓制度を利用することも非常に有効な手段です。手続きや受けられるサービスは各自治体によって異なるのでホームページでご確認ください。北関東3県では、市町村でパートナーシップ制度を実施していなくても、県のパートナーシップ制度を利用できます。
以上、法律婚と事実婚について比較してきました。事実婚の解消、老後の生活、パートナーの死亡等あまり考えたくはないことですが、二人で話し合って事前対策を講じて将来に備えることが大切です。今お付き合いされているパートナーと生涯を添い遂げようとお考えの方は、是非このブログをご参考にしていただけると幸いです。


